2010年8月16日月曜日

第2回 クロスレビュー Gene Ammons"Boss is Back ! "(Pretige)

第2回 クロスレビュー 
                                   Gene Ammons "The Boss is Back!"(Prestige) 



Personnel: Gene Ammons(ts), Prince James(ts), Houston Pearson(ts), Junior Mance(p),Buster Williams(b), Frankie Jones(drms), Candido(conga),Sonny Phillips(org),Billy Butler(g), Bob Bushnell(el-b),
Bernard Purdie(drms)

recorded in Englewood Cliffs, New Jersey November 10 and 11, 1969



1,Tastin' the Jug (7:27)

2,I Wonder (7:58)

3,Ger-ru (8:45)

4,Here's That Rainy Day (8:07)

5,Madame Queen (6:52)

6,The jungle Boss (5:42)

7,The Jungle Strut (5:10)

8,Didn't We (6:04)

9,He's a Real Gone Away (5:05)

10,Feelin' Good (5:35)

11, Blue Velvet (4:05)

12,Son of a Preacher Man (4:25)





渡部信順の場合



ジーン・アモンズの味のあるテナーを聴いて、思った一言。 「あ、ベン・ウェブスターだ」 違う違う。 ジーン・アモンズである。 しかしながら、この音色は聴いているだけでマリファナの香りやらタバコの匂いがしてくる。そういう音色こそまさにベン・ウェブスター直系だと思うんだけど、僕だけかしら。

ま、いずれにせよ、ジャズというのは本当に音に秘められたテイストの音楽と言いたくなる。そういう音楽がここにある。それ以上の説明はここでは野暮だとしか言いようがない。 ボスだとか言われるので、もっと熱い演奏なのかと思った。 もちろん熱はそこにある。

しかしそれは単なるテンションに出るのではなく、テナーサックスの音色の味わいに出てくるのである。 音は太く、どっしりとして腰が据わっている。軽業師のような小手先の芸は彼には無縁である。それでいてフレーズに独特の味わいがあり、間の空け方が絶妙。結果として夜の煙にむせび泣くような、大人の哀愁を感じさせるテナーになるのである。ほとんどテナーを吹いているというか、もうタバコを吹いているんじゃないかと思う。 ただベン・ウェブスターと少し違うのは、どこか音に女を口説き落とすような、低音の男の言葉がある。ベン・ウェブスターでも充分、女は口説き落とせると思うが、それ以上に艶かしい音色がジーン・アモンズだろう。 耳元で熱いささやきを女に向かって吹きかけている、そんな粋な男がジーン・アモンズという音色なのだろうかという気がした。





マサ近藤の場合



私が私である以上、客観は存在しない。以下の文章は私が私に忠実であるための文章で

あり、極力技巧を凝らさぬように書いたものである。(技巧は忠実さに欠いてしまう恐れが

ある)



これはスタイルではない。これは流儀だ。



このジーン・アモンズのテナーサックスのサウンドは歌ではない。沈黙を彼方に追いや

る笑いだ。苦痛によって引き剥がされた感情である笑いは引き離されたときに我々の手か

らうっかりすべり落ちてしまった。今もジーン・アモンズのテナーサックスのサウンドは

落下を続けている。



※打楽器奏者が二名いるにも関わらずアンサンブルの重厚に欠いた部分を聴いて欲しい。

これは重厚さが本質とは何の関係も無いことをあらわしているではないか。





McLean Chanceの場合



もし、アモンズがジャズ界に100人いたら。なんて、妄想してみると、優秀なテナー奏者の遺伝子を全世界にばら撒いてくれるであろうなあ。と、思う。とりわけ、「少子高齢社会」などという全くもって不名誉な汚名を着ることとなったニッポンには、少なくともアモンズが10人は必要であろう。

アモンズのテナーの魅力は、理屈ではない。男そのものである。漢、いや、侠であろう。テナー一本をさらしに巻いて、嵐寛寿郎扮する親分(必ず、敵方の組に襲撃されて寝たきりである)に黙って小雪のちらつく闇夜に消えていく。「親分、行ってめえりやす。」

 ジャズとは夜の音楽。イケナイ都会の大人の音楽である。ジーパンにTシャツ、スニーカーに、ソプラノサックスなんぞを抱えて、真昼の野外にやるものではないし、缶ビールなんぞを飲みつつ、芝生に新聞紙を敷いてみる音楽などではない。そんなものは犬にくれてやるがいい。

 ためしに「アイ・ワンダー」を聴くといい。7分にもならんとする、アモンズの底なしのバラードがあれば、ジャズは全く大丈夫なのである。しかし、この深く美しい、ふくよかな音色を、一体何にたとえたらいいだろう。

  アモンズの人生は、あと5年である。そのことを知ってか知らずか、彼はトコトンぶっとく吹き続け、あっけなくこの世を去った。塀の向こうから帰ってきたら、残り時間はあまりなかったのである。男は黙ってジーン・アモンズのテナーを聴くものである。

  「男とは何ぞや?回答せい!!」と、言った漫画があったが、その回答がここにある。

  尚、現行のCDは、『ブラザー・ジャグ!』と曲順が混ざった形で発売されているが、もともと、2つのセッションからこの2枚が製作されているので、違和感はない。

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