2010年8月16日月曜日

第5回 クロスレビュー Freddie Green “Mr. Rhythm ” (RCA)  Count Basie / Dizzy Gillespie  “The gifted Ones”(Pablo)

Freddie Green “Mr. Rhythm ” (RCA)

1.Up in the Blues(Freddie Green)

2.Down for Double(Freddie Green)

3.Back and Forth(Freddie Green)

4.Free and Easy(Freddie Green)

5.Learnin’ The Blues(Dolores Vicki Silvers)

6.Feed Bag(Freddie Green)

7. Somethin’s Gotta Give(Johnny Mercer)

8.Easy Does It(Sy Oliver, Oliver James Young)

9.Little Red(Freddie Green)

10.Swinging Back(Freddie Green)

11.A Date with Ray(Freddie Green)

12.When You Wish upon A Star(Ned Washington, Leigh Harline)



Personnel: Freddie Green(g), Al Cohn(ts,cl,bcl), Joe Newman(tp), Henry Coker (tb), Nat Pierce(p), Milt Honton(b), Osie Johnson(drms on 1,3,6,7,9,11) Jo Jones (drms on 2.4.5.8.10.12)

Recorded in December 18, 1955, Webster Hall, New York



Count Basie / Dizzy Gillespie  “The gifted Ones”(Pablo)

1.Back to The land(Count Basie, Dizzy Gillespie)

2.Constantinople(Dizzy Gillespie)

3.You Got It(Count Basie, Dizzy Gillesipie)

4.St. James Infirmary(Tradditional)

5.Follow The Leader(Count Basie, Dizzy Gillespie )

6.Ow !(Dizzy Gillespie)



Personnel: Count Basie(p), Dizzy Gillespie(tp), Ray Brown(b), Mickey Roker (drms)

Recorded in February 3,1977, Las Legas Recording Studio, Las Vegas







McLean Chanceの場合



 2つのアルバムの間には22年間の時間経過があるわけですが、その間に起こったジャズの栄枯盛衰たるやすさまじいものがあったことはさておき、ところで、この2作、ちょうど正反対にできている。グリーンのアルバムは、リズムセクションがスイングなのだが、ホーンセクションがモダン。かたや、ベイシー、ギレスピーの方は、ベースとドラムが70年代しまくってるのに、ベイシーとディジーはなんにも変化なし。面白いことに、双方にベイシー・オーケストラの重要メンバー(ベイシー、グリーン、ジョー・ジョーンズ)が参加していて、普段どおりのことをしてる。

 不思議なことに、フレディのアルバムのほうがモダンな印象を受け、ディジーのラッパは、しみじみとブルースを吹いている。しかもかなり濃厚で、普段のお祭り騒ぎは皆無だ。

ベイシーとフレディ、ジョーンズはまったくいつものとおりの仕事をしているだけなのだが、それがこの人たちのすごさであり、唯一無比の個性であることを改めて痛感させられる。特に大きいソロもとらないというのに。

 フレディ盤がモダンに感じるのは、アレンジのせいが大きいだろう。アル・コーンとアーニー・ウィルキンスが担当した曲がそうで、とりわけ7曲目が傑作と言ってよいだろう。

 かたや、ベイシー&ディジー組は、とりたてて凝ったことは何一つしてはいない。まあ、ノーマン・グランツが自分好みのミュージシャンを適当に組み合わせてやってるだけなのだろう。だから、フロントのどす黒さとリズムの70年代のベース特有のビヨーンとした奏法が何だかチグハグで笑えるが、目くじら立てて怒るほどのことではない。むしろかわいいなあ。くらいの度量が聞き手にも必要だろう。グランツのやることは一事が万事これなのだ。

 こうして考えてみると、この2枚、歴史的にはなんら重要だともいえないし、驚天動地の大傑作でもないのだが、プロデューサーいかんでアルバムの完成度というのはかなりの部分決まってしまうのだ。ということがよくわかってくる。

 フレディは、そもそ強力なリーダーシップでバンドをまとめるのでなく、あの絶妙なリズムギターでバンドを纏め上げることに生涯を捧げきった人なわけだから、プロデューサーとしては、普段どおりやらせるのが、ベストな選択で、人選やアレンジなのは一切考えさせないという作り方だ(フレディが何らかの意見を言っているとは思うが)。曲順も奇数曲をモダン、偶数曲をスイングにしており、ドラマーも換え、キレキレのモダンをアル・コーンにアレンジさせてるのも正解だろう。ただ、優秀なミュージシャンを集めればよい。という安直な作りではない。また、ジャズ・アルバムの製作に大手レーベルが予算を出してくれた時代ゆえの経済的余裕というか、大人感もただよっている。

 それに対してグランツのそれは、とりたてて決まりはないように思う。ヴァーヴ時代からの手法で、この人とこの人を組み合わせたら面白かろうくらいが、彼のアイディアと想像する。このやり方は、50年代の、とんでもない連中がゴロゴロしている時代には傑作連発もできたであろうが、ファンクやロックをやったほうが圧倒的に実入りがよかったであろう70年代の後半に、そんな安易な発想で傑作などできるわけもなく、双頭リーダーがかもし出す、時代に逆行する異様なまでのパワーは、スムースが身上のフュージョン全盛の時代には突出して映っただろうし、そんな時代を「いやな時代だなあ」と、座頭の市よろしく嘆いていたアンチ・フュージョン派には、渇きを癒す作品(事実、ディジーもベイシーもホンモノの迫力を備えている)だったのではなかろうか。とりわけ、ミュートで切々と歌い上げる「セント・ジェームス病院」は、みごとという他ない。 

 1977年といえば、ちょうど、マイルスが引退していた時期にあたるが、そのことと、このディジーには珍しいミュートプレイにとの関連性といいうと、何がしかの想像をかきたてるざるをえないけれども、それ以上は文学であるからして、ここで止めておこう。

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